出資額限度法人といえども、相続時には時価による評価となります。しかし相続人が出資持分の払戻しをうけた場合は、出資額による評価となります。では出資払戻しをうけた相続人が、再度法人に出資をおこなった場合はどうなるのでしょう?
この場合、実質的に出資をそのまま相続したものと同じと解され通常どおり時価による評価となります。したがって、払戻しを利用した相続節税は不可能になっています。(以下参照)
時価評価による相続負担増を回避するには①設立のときから、あらかじめ後継者を出資者にしておくか②含み益が増えないうちに相続時精算課税を利用して出資持分を贈与しておくか、何らかの対策が必要でしょう。
払戻しを受けた後に、再び出資して出資持分を取得した場合の相続財産
(2005年7月28日国税庁審理室情報第2号)
(問)
平成16年6月16日付文書回答によれば、社員の死亡退社に伴い、被相続人の出資に関する出資払戻請求権を取得した相続人等が現実に出資払戻額の払戻しを受けたときには、当該出資払戻請求権は出資払込額により評価することとされている。
そこで、相続人がいったん出資払込額の払戻しを受け、その後改めて同法人に出資して出資持分を取得するとすれば、相続税の課税上は、当該出資払戻請求権は払込出資額により評価することとなると解して差し支えないか。
(答)
あらかじめ出資持分を取得することを予定して払戻しを受けていると認められるような場合には、実質的には出資を相続したものと同様であることから、出資としての価額により評価されることとなる。
(理由)
出資払戻請求権を相続等により取得した相続人等がその払戻しに代えて出資を取得した場合には、当該出資払戻請求権の価額は、財産評価基本通達194-2の定めに基づき評価することとされている。
これは、定款の定めにより被相続人の出資を社員の地位とともに相続する場合だけでなく、定款にそのような定めがない場合でも、社員総会の承認を得て社員として出資を引き継ぐときには、その実態から相続財産は出資とみるのが相当との考え方によるものである。すなわち、被相続人から相続等により取得した財産が出資持分に相当する権利であるか、出資額の払戻しを受けるだけの権利であるかは、その実態に応じて判断する必要があり、単に金銭の払戻しの事実だけでなく、当該相続人及び他の社員等の認識等も含めて総合的に判断すべき事柄である。
したがって、あらかじめ再度出資持分を取得することを予定して払戻しを受けていると認められるような場合には、実質的には出資を相続したものと同様であることから、出資としての価額により評価することとなる。
なお、相続人が出資を相続したものと認められ、それに基づき相続税課税上出資としての評価がなされる場合は、相続人が当該払戻額を出資した際に問1のような課税は生じないが、そうでない場合には、退社時と出資時にそれぞれ課税関係が生じることに留意する。